Warumiの柱

「こころミュージアム」のキュレーター。Warumiの「こころの魔法」研究報告です☆

「上から目線」はいかにして装備されたか(その2)

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 今日もこちらの続きです。

warumi.hatenadiary.com

嗚呼、親心。

と言ってもですよ。それを差し引いたとしても、子どもにとってはただただ戦場のような毎日でした。父か母か、場合によっては両方から爆弾が投下されるんですからもう!家庭で気の休まるヒマなどありません。

ところでまた急に話は飛びますが(ついてきて♡)、サービス業界ってちょっと不思議な世界です。私、一時期ホテルで働いていたことがあるんですが、高級ホテルってね、当たり前だけど優雅できらっきらした場所です。でもね、従業員が使うスペースってえ?ほんとですか?ってくらい質素で、なんならボロッボロだったりもするんですよね。お客さまのエリアとは天と地ほどのえらい違いがあるんです。旅行に添乗員としてアテンドするときも一緒。お客さまの部屋はもちろんピカピカですが、昔あった添乗員部屋(今でもあるんでしょうか?)、というものは慣れないうちは、え?ここ!?(絶句)ってなりました。

私にとっての家庭って、まさにそんなイメージでした。私にとって、家庭や、親、家族の関係はすべてハリボテだらけの従業員エリアの象徴のように見えていました。そして自分の事は姫どころか「姫メッキの偽物(召使い)だ」って信じてました。母を残してキラキラなお姫さまになるわけにはいかなかった。シンデレラのガラスの靴は私の足のサイズには合ってない。だって私は本当は召使いだもの。

しかし一歩外に出れば、めちゃめちゃ姫感を演出する使命があった。これは父由来です。もしやあの子がうわさのシンデレラ?くらいは思わせておかないと!でも、ガラスの靴を持ってこられては困ります。姫じゃないのが、ばれちゃうから!お客さま用のキラキラエリアの隅の方を、姫メッキでささっと歩くっていうのが、よって私のアイデンティティのデフォルトとして定着したように思います。

父に猛烈に反発しながらも、母由来の「召使いの身分の私」を世間様に晒すのはしのびなく、そしてとても恐ろしく、その使命通り「キラキラな姫である私!(でもあんまり見ないで!来ないで!)」で乗り切ろうと奮闘しました。それはまさに自分の価値観がねじれ、引き裂かれた状態でもありました。その姫メッキの下では孤独感やらやるせなさが渦巻いていて、やりきれない時もありました。でも誰もそんな私をわかってくれない。

しかし!いやー!!こう書いていると、ホテルや旅行会社で働きたいなって思っていた自分がね!自分のこころの情景を、サービス業そのものに投影していたかもしれないなって、今、そんな風に思っちゃいましたー!自分のこころの中にある原風景的なものに人は引き寄せられていくものなのかもしれませんね~。

あの頃の自分にとって、そこはとても馴染み深い世界に見えたのでしょう。あ!逆に背を向けるパターンってのもあるかもね。私の場合は近づいていきました。そして面白いことに、そこでは家族の中にいた時と同じようなことをしていたのかもしれません。全方向に気を遣い、顧客や先輩、上司の誰の願いもすべからく叶えようと必死でした。やってたのは召使的な仕事だし!一体私は、原風景の何をコピーしていたのでしょう!?ちょっと笑える!

そして、ん~無意識!!私が愛してるだけあって、やっぱりいい仕事するぜ!!痺れますよね!♡もう、無意識のファンクラブをつくりたくて仕方ない♪ない♪

もとい。

父由来の「キラキラに生きる姫としての使命」+母由来の「召使である自分」のハイブリッドはどうなるかっていうとね?それがまさに「上から目線」のWarumiちゃんの誕生!です。

どうしてって?

まず第一に、エリアの特定任務があります。この引き裂かれた価値観の下では、常に私が今、従業員エリアにいるのか、お客さま用エリアにいるのかを、瞬時に判断しなければなりません。なぜって、エリアを間違えた言動、行動は命取りになるからです。この判断の必要性から、場の状況や人のこころの動き、一歩先を見通す能力をバリバリ磨き上げました。

特に家庭においては、日替わりどころか、時間替わりで、敵(父か母か)が変わるんですよ!敵を同定した上で、どちらのエリアに即した発言をするか判断する必要があります。どちらが優勢で、どうやったら敵を倒し、ここから無傷で逃れられるか!どんなゲームよりドキドキです。上からその場や状況を俯瞰的に見通す能力、すなわちこれが「超・上から目線」戦闘能力のその1です。

ところで、場や人を見通せるようになると、学校のお友達とはうまくいかなくなりました。彼らはずいぶんと幼く見えました。仲良くはしたいのだけれど、近づくとものすごく自分が不器用な感覚に陥るんです。特に小~中学校の頃はそうでしたね。彼らに話が通じるとは思えなかったし、居心地が悪かった。学校にいても敵地にいる感覚が抜けません。表面上はそうじゃないように見せていたけれど、きっと私はヒリヒリした雰囲気を放っていたように思います。友達ともそれなりには遊び、学生生活をそれなりに送った記憶はありますが、でも、今でもふんわりとした思い出はほとんどありません。つらい時に頼りにしたのは当時の先生や、作家の人たちでした(何なら太宰治とはお友達感覚でした!)。中学生の時、私は友達に「さん付け」で名前を呼ばれることが多かったなあ。その時には気に留めもしなかったけれど、友だちとの関係性にそのくらいの距離があったのだと思います。

こんなサバイバルゲームの毎日の中では、生き延びることだけが最重要目的となります。特に家庭では、逃げるにも限界がある。大人のずるさも知っていたので(例えば「一体誰の金で飯を食ってると思ってるんだ!」という有名な親の論法です)先制攻撃能力を高める必要がありました。やられる前にやれ、ってやつです。バズーカ砲など持てぬ幼きWarumiちゃんの武器はもちろんこの舌です!。家庭の外でも、姫メッキめがけてやってくる敵を撃退したり、いなしたり、逃げたりするためには、舌鋒鋭くある必要がありました。それに激しい言葉は時として「そんなことわかる/知ってるなんてすごい優秀!」って敵の「あっぱれ!」という副産物をもらえることがあって、どっちにしても私には好都合だったんです。

何れにしても勝負は一瞬。出来るだけ早いタイミングで相手が「これだけは言われたくない!」というところをぐさっ!とやっちまうことです。ぐさっとやるためには敵の正体を瞬時に見透かし、泣き所を探さなければなりません。こうやって鍛えられたのが「超・上から目線」戦闘能力その2。

このように自分の正体(召使い)を恥と思いつつ、姫になりたいけれどなれない、なっちゃダメ。その代わりに姫を演じなければならならず、演じる自分のいやったらしさに反吐が出るけど他に生き残る道なし!というパラドックスの下で、私はとても繊細でプライドが高い子どもに育ちました。姫メッキがはがされる=死!って思っていましたね。正体を見破られないよう、常に姫感アピールはしなければならない。しかし誰かに「それならこのガラスの靴を履いてみてよ?」ってなんて絶対言われないよう、そんなことに絶対ならないよう、戦闘能力1、2を駆使して逃げるか、先制攻撃をしかけるかして、生き残りを図り続けました。

かくして、Warumiにハイブリッドな「超・上から目線」装備完了!(おめでとう!)と相成ったのでございます~

(つづく)