Warumiの柱

「こころミュージアム」のキュレーター。Warumiの「こころの魔法」研究報告です☆

「上から目線」で働いてみたらこうなった(その2)

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ということで、前回のこちらに引き続きのお話。

warumi.hatenadiary.com

出社拒否の最初の朝。今でもよく覚えていますねー!寝たり覚めたりして辿り着いた朝、ぼんやりベッドの中で「。。。もう無理だ。おわりだ。」ってめそめそと泣きながら思ったんですよね。で、会社に連絡もせず、というか出来ず(「熱があっても這ってでも来い!それが社会人だ!」みたいな時代だったんでね~)ただただもうベッドから出られない、起きられない、どうかもう、みんな私のことなんて忘れてほしい。消えたい。そんな感じでしたかね。

そうやって1週間くらい会社を休みました。ほとんどずっとベッドの中にいました。そんな私にとって救いだったのは、その頃、とても仲良くしていた同期が何人かいて、わざわざ家に訪ねて来てくれて他愛もない話をしてくれたこと。そして直属のイケメン上司もやっぱりこっそり訪ねて来てくれたことです。彼は「女性の部下は初めてで、正直指導の仕方もよくわからずに追いつめてしまったかもしれない。すまなかった、Warumiさんの本当の気持ちが聞きたいです。」と今思い出してもじーんとする言葉で語りかけてくれました。

そんな彼らに助けられて、なんとか仕事には短期で復帰出来ました。その時はね。でも結局それから2年後には、結婚を逃げの理由にしながら本格的に退職しちゃったんですけどね~(またそれは別のお話!)

まあ余談ですけど、逃げる時は、大きく逃げるに限るのだ。でも書いた通り、逃げられる限りは逃げるっていうのも大事だと思います。人間、本当に追い詰められると逃げられなくなります。逃げるって選択肢が思い浮かばなくなっちゃうのね。だから、逃げる、という文字が頭をかすめた時は逃げてください。これも書きましたけど、逃げても、その時逃げたものとはね、いずれきっちりタイマン張るときがやってきますから♡その時には自分にもタイマン張れるだけの準備が出来てる。オトシマエはつけられる。だから大丈夫!逃げろ逃げろ。

これが「上から目線」で働いた結果その1です。ここからはまた別のお話。

会社を辞めてもやっぱり旅行業界からは逃れられず!その後も同じ業界の違う会社で働いていた時の話です。旅行会社って一般的にはホテルとか飛行機を手配してくれるところ、ってイメージがあるかもしれません。しかし私が担当していたのは「テクニカルビジット」と呼ばれる視察の手配や情報収集、ホームスティや学生旅行のオーダーメイドプランニングっていうようなお仕事でした。旅行ってのにも色々ありましてねー!お役所の方々が、現地の福祉施設とかごみ処理場を視察に行ったり、一般企業が現地のビール市場を調査に行ったり、学生ちゃんたちが英国伝統文化を学びに行ったり、まー!そりゃ種々様々なわけです。

で、私のお仕事。まずは日本のお客さまの「こんな視察したいですー」というご希望を頂いて、それを各国の現地支店にいる現地スタッフにリクエストします。で、返事と情報を待つ。現地支店の外国人担当者から「ばーかーやーろー!!毎度こんな都合いい視察先なんてあるわけねーだろ!?ったく俺様の時間を無駄にするんじゃねえ!(ここまでが時候のご挨拶の意訳、以降がお返事の中身)えーわたくしが調べましたのはこちらの視察先ですが・・・」という回答をもらう(あ、すみません!私の一番のお気に入りだった現地担当者の回答はいつもこんな感じでした!英語の悪口が格調高くて大好きでした~♡)。で、その回答を訳してお客さまにお送りする。これが一連の流れです。

しかしその回答!担当者によってはなかなか来ない!んですね~。特にラテン系の血が流れている国!日本はとりわけ「期限」というものを大事にしますからね、期限内に回答をお送りしないと信用問題にかかわっちゃうんです。なので、ここではわたくしの戦闘能力その2が遺憾なくその威力を発揮致しました。何度かなしのつぶてが続くなんてことになると「えーっと、Warumiさまのリクエストは見てくれたかしら?(もちろん見たわよねっ?)期限内に回答が来ないと、この仕事、他社に取られます。いいんだなっ??」等と凄みをきかせつつ、督促します。回答の内容が期待外れの時もまた、現地を叱咤激励してなんとか形のつくような情報を入手しなければいけません。メールが来ない相手にはURGENT!!!!!!とでかでかと書いたFAXを送りつけたりもしました(あ、念のために私だけじゃありませんよ、みな多かれ少なかれそんな感じで現地を督促するんです)。

情報がゲット出来たり、視察先に「来てもいいよ~!」って言ってもらえばようやく半分ゴール。でもたいていの場合、この段階でもその旅行は他社と競合中だったりするので安心はできません。競合に負ければ利益ゼロのただ働き!おまけに視察先からは「なんだよ、来る来る詐欺だな」なんて思われて信用を無くすと次のオファーを受けてもらえなくなっちゃうこともある。

この会社で働いていた間は、常にこのプレッシャーと全方位への駆け引き、で場を読みまくったり、状況をコントロールすることに血道をあげておりました。現地支店からの時に過激で時にスカスカな情報を、なんとか見栄えよくお客さまに提示しなければならない。或いは「これ、旅行会社がやらなくちゃならない仕事ですか?それもただ働きで??」というようなリクエストを現地支店にうまく伝えて、やってもらえるように説得をしないといけない。特に海外の現地スタッフは自分が納得しないと動いてくれない方が多かったように思います。そもそも!自分だって納得していないようなことを相手に説得するのはなかなか骨が折れた!

ツアーを獲得できればいいけれど、コンペに負ければすべてがパー。晴れてツアーを獲得できても、今度は突然OKだった視察先が受け入れを拒否しはじめたり、嗚呼、もう人生もツアーもいろいろすぎます。

その状況下において、主にメールと電話、黎明期のskypeを駆使し、Warumiの戦闘能力1はまたフル稼働をしていました。新入社員の時とは違い、それなりに知識や経験も積んで、戦闘能力はバージョンアップされています。ぴよぴよの時のようにガス欠になることはもはやありませんでした。よかったね!と言いたいところですが、ところがところがどっこい!今度はこの戦闘能力にまわりがついて来られないのです。

現地支店の担当者を追い回したのは先に書いた通りですが、Warumiの会社にも営業マンたちが何人かいました。主に彼らがお客さまからのリクエストをヒアリングしてきます。そして彼らのヒアリング精度によって、現地支店の担当者への訴求力や情報収集の作戦が変わってくるのです。それには、お客さまが本当に希望しているのは何なのか、何がMUST要件なのか、代案可なのか不可なのか、などなど様々な情報が必要となります。

ですが、当時の営業マンはやさしい人が多かった!お客さまにほだされて「何とかします!」なんて言ってきちゃった手前、こちらには「何とかしてください~涙」と泣きついてくる。Warumiは連日連夜、彼らを相手に怒り狂い続けました。戦闘能力2もパワーアップしていますから、詰め寄り力、及び迫力も満点です。

何とかしてくださいじゃねえ!落としどころはどこなんだ?料金は?時期は?人数は?で、競合状態はどうなってるんだ??と、情報を求めて彼らを締め上げましたが、何人かの例外を除いてみな縮みあがるばかり。私はいら立ってますます、彼らを刺しまくりました。ええ、例の幼いころから磨き上げた舌の鋭さでね。ついには、私がトイレで離席している間に、そーーっとリクエストシートだけ机上に置いて消えるという猛者まで現れる始末(その後、いつもの倍はきっちり怒りましたけどね!)。

ということで、その頃の私は、常に常に常に怒っていました。頼りない営業マン。理不尽なリクエストを送ってくるお客さま、真面目にやれっ!と突き返したくなるような回答しか送って来ない現地支店。どうして私の意図がわからない??通じない??どうして???

そしてその怒りの底には、こんな感情もありました。いつも助けてくれるやさしい営業マン。すばらしく寛大で且つ、魅力的なお客さま。いざとなるとめっちゃ頼りになる現地支店担当者。そう、彼らにそういう面があることはわかっていた。そして、そんな彼らすべてを失望させたくなかった。そうです、全て勝ちに行きたかった。勝ちさえすれば、彼らごと私も救われると思った。

そんな私を「真面目だよね~」と揶揄する上司もいました。その上司への反発は別としても、思うに、私の真面目さが向けられる相手は仕事そのものではなかったなあと思います。

私の真面目さは、主ににひとのために向けられていました。なぜって?そうです。そもそもあのギプスで養成された能力は両親由来のものです。父と母の両方に反発しながらも、彼らの面子をたてようと、そして彼らをなんとか失望させまいと、あの能力を磨いたわけです。そしてそれが私が生き残れる唯一の道だと、幼い私はそう信じていました。だから私はどうしても勝たなくてはならなかった。でないと、彼らを救えない。私も死んでしまう。真面目にならざるを得ません。

そしてけんかが絶えなかった自分の家で、両親を救えなかったと思った時におそらく感じていたであろう無力感と彼らへの怒り。それが、お客さま、現地支店、同僚、上司を満足させることが出来なかった、勝てなかった、と思うたびにフラッシュバックしていたのでした。場所や状況は違っても、ひとはこうやって幼いころの感情を生々しく想起できるシステムが備わっちゃっているらしいんですよね。

しかし、そりゃつらいよね~!

(つづく)