Warumiの柱

「こころミュージアム」のキュレーター。Warumiの「こころの魔法」研究報告です☆

人魚姫ー自己犠牲から魔女さま弟子入りへの転換。

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唐突ですが、小さい子どもの頃からお気に入りのおなはし/ものがたり、って何かお持ちでいらっしゃいますか?

わたくしはと言いますとですね、圧倒的に「人魚姫」です!!なぜか「人魚」というものに小さい頃からひとかたならぬ思い、興味や親近感がいっぱいでした。今もそうなんだなあ♡

人魚。何なんでしょうねー?人魚ってこう書くだけでもテンション上がるというか、ちょっとだけ胸がどきどきする感じすらある。海辺で育った、ということも関係するかもしれません。それも手伝ってでしょうか?幼いころからの私のお得意の妄想のひとつに、この「人魚」にまつわるものがいくつかあるんですね。曰く:

 私の出自はほんとうは海で、ほんとうは人魚なの(!!??)

 ということで、しかるべき時に海に帰らねばならない(ちょっとかぐや姫も混じってる?)

 とはいえ、家族に内緒でいなくなるわけにはいかないから、ちゃんと挨拶してから海に帰ることとします。

 挨拶するときには、人魚の姿を見せなくてはいけない(親に「人魚なら仕方ない」って納得してもらわないといけない)から、挨拶の前に人魚に変身する。変身するときは大きな折り紙のような「うろこのシート的なもの」を足にラップする。そうするとあら不思議!すぐに足が消えて人魚の魚の部分に変身する。

 (ここで問題勃発!)当時の家は海まで100メートル以上離れている。家で人魚になっちゃうと、海までどうやって行けばいいのだろう。。。まさか、抱っこしてもらって海に行くわけにはいかない。最初に海辺に家族を連れて行って、そこで変身すべきか?でもみんなの前で変身するのはいやだなあ。。。(すごく悩む)

。。。以上、こんな感じです。自分でも「なんでこんなこと思ってたの?」と、おもしろくてちょっと気に入ってますけどね。ちなみにこうやってブログ書いてますから、残念ながらまだ海には帰れていません。

この人魚好き?な私の心にずっとあるアンデルセンの「人魚姫」のものがたり。ここでご説明するまでもなく、皆さまもご存知かと思います。ちょっと切ないおはなしですよね。

魔女さまに頼んでやっとの思いで人間の足を手に入れたというのに!王子さまの勘違い(本当は人魚姫が助けたのに、たまたま息を吹き返した時にいた女性=隣国の姫が命の恩人、と思ってる)は解けず、姉たちのラストチャンスのオファー(王子さまを短剣で刺して、その血を浴びれば人魚に戻れる)も断念し、海の泡と消えたとさ、と。嗚呼。。。

心理の勉強を始めた頃、私はこの「人魚姫」を自己犠牲の物語なんだな~って思いました。私はどうも小さい頃からこの「自己犠牲」に何か特別な思いがあったらしく、「人魚姫」以外にも、オスカー・ワイルド「しあわせな王子」もかなりお気に入りでした。「自己犠牲」という観点からは、これもちょっと人魚姫と似たお話かもしれないなあ。こうやって未だに読み継がれ、そしてさまざまな解釈をされている偉大なものがたりはたくさんありますよね。とても示唆に富んでいて、イマジネーションが掻き立てられる!

で、この人魚姫のものがたり。無償の愛、的な?自分の幸せよりも他人の幸せを優先する尊さ、切なさ、のおはなしなんだな。って私は思ってました。それが良いとかだめとか、そういうことじゃなくて、人間の愛の可能性みたいなものをアンデルセンは描きたかったのかなあ、って思ってたんですよね。ちょっと宗教的ですらある。

そうも読める。

で、今、改めてつらつらとこの「人魚姫」のものがたりを思い出しているうちに、ん??待てよ??これはそれだけじゃないかも??という思いつきが降ってきたんですね。

そもそも人魚姫は半分人間で、半分がお魚じゃないですか?で、その「人魚」が、「人間」に憧れた、と。人魚姫は人間になって人間界に行きたかった。なぜってそれって恋しちゃった王子さまが生息する世界だから。

海という広大な夢や無意識の世界を自由に泳いでいた人魚姫がね、はじめて「人間の世界」という形ある表層の世界へ足を踏み入れたんだな~って思ったんですよ。それが或いは「初恋」の本質なのかもしれませんね。今までとは違う世界(大人の世界)へのジャンプアップ。

ティーンエイジャーが大人の世界に背伸びするように、人魚姫も人間に憧れた。その気持ちはものすごくよくわかる!そういう時期、誰しも経験しますもんね。そして新しい世界に足を踏み入れる時というのは、その世界への憧れが後押しをしてくれることが多々あります。

そこまではいい。そこまではわかる。そこで人魚姫が何をしたかっていうと、魔女と取引をしちゃったんですよね~。この魔女がほんとによくわかってるっていうか!もう、底意地が悪いというか!!よりによって「声」と「足の痛み」を要求してきた。

この「取引」に今日、おお!!って思っちゃったんですよ。なんで人魚姫、そんな取引をした!?と。そこまでして人間にならなくちゃいけなかったんだろうか。人魚のままじゃだめだった??(え?)

ええ、ええ、わかりますよ。人間同士じゃないと恋もできないだろうしね(でも物好きな王子さまだっているかもよ?)。人魚姫は王子さまと結婚したかったんでしょうね。だから人間にならなくちゃならなかった。ならなくちゃって思い込んだ。他に道なし!

でもそれってホントにそうだったんでしょうか?。。。再度大胆なこと言いますけど、もしかして人魚の姿のままでも良かったんじゃないの?だって人魚のままだったら喋れたんですよ。その美しい声で「あなたを助けたのは私だから!」って言えたんですよ!それを異形のものが言ったところで王子さまが信じるかどうかは賭けだけど、でも自分で伝えることは出来たじゃんね?

そしてもう恐ろしいほどに色々お見通しの魔女さま。人魚姫のその声を奪ったばかりか、人間になるために取引をしたという事実をずっと人魚姫が思い出せるように?「一足歩く度にナイフでさされるような痛み」を感じるような魔法をかけちゃったわけ。

この「取引」は、やばくないですか?人魚姫になんかメリットというか幸せはあるのかよ??と、人魚姫推しの私はちょっと怒ってきました。

いや、多分ね。魔女はわかっててやったんだと思うんですよねー。そんな風に自分を偽って、偽物の自分を常に意識しなければならない世界では、どうやっても幸せにはなれないよってことをね。でもほら、この世はなんでも経験しなくちゃわからない、っていうWarumiのような人も多々いるわけですよ。で、たぶんこの人魚姫もこのタイプだったんでしょうね。言い出したら聞かない(笑)。

だからね。敢えて魔女はそういう取引を人魚姫に突き付けて、人魚姫にそれを選ばせた、と。で、まんまと?人魚姫はたいへんな毎日を人間界で過ごすことになった。

多分ここでね、書かれてないけど人魚姫もいろいろ「人間界」のことを学んだと思うんですよ。足の痛み=偽りの自分を常に感じながらね、いろんな体験をした。だから王子さまを刺し殺せなかったんじゃないかなー。もちろん恋してる相手だからでしょうけれど、愛憎の果てに大変なことに!ってのも、浮世では珍しくないじゃないですか?だからこの人魚姫が下した決断の瞬間というのは、人魚姫にとってね、「人間界」で起こった真の意味での彼女の変身だと思うんですよねー。

で、そこまでの人魚姫の成長の可能性に、魔女さまがきっと織り込み済みで賭けたんだと思う。だいじょぶ、この子はやれる!って信じたのかも。あら、ちょっと魔女さまへのリスペクトの念がわいてきました!

でね、まあ結末は普通に読むと悲しいんですけど。海の泡と消えた、という記述のものと、そこから風に乗ってお空に上昇していきましたってなっているエンディングもある。

これね、ああ、もう「条件」とか「取引」とか「ドラマ」を超えた世界に人魚姫のマインドがあるっていうメタファじゃないかなーって思ったんですよね。だから、人魚姫の人生?魚生?のスタートはむしろこれからだ、よかったな!!って今日思ったんですよ~。

ってことで、人魚姫。改めて取引の恐ろしさと、そのありがたみもわかった。そして魔女さまの手のひらの上で転がされてる感じも。魔女さま、あんたすごいよ、すごすぎる。

ところで私が人魚姫で、また王子さまに恋しちゃった♡なんてことになったらね!今度は取引はしないで、魔女に弟子入りしまーす。決めた決めた♡