Warumiの柱

「こころミュージアム」のキュレーター。Warumiの「こころの魔法」研究報告です☆

夢野久作、杉山家一族に思うこと(その1)

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以前「ドグラマグラ」についてこちらで書いたが、何を隠そう(隠してないけど)私は相当夢野久作が好きである。

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どのくらい好きかというと、去年、これを見るために九州の大刀洗平和祈念館まで足を運んだくらい好き、そして彼の一族にも興味津々なのである。

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だってあんな「ドグラマグラ」みたいな小説を書けちゃう人が、いったいどんな家庭に育ったのかって興味しか沸きませんよね!?(と、周囲に言い続けて引かれた経験が何度もあるので、代わりにここで一族への愛を書き連ねておきます)。

まずは夢野久作のお父さん、杉山茂丸氏。この人からしてすごい。貧しい生活の中でも近所の子どもに塾を開くような儒学者の父のもとで生まれ育った茂丸氏。当然、幼いころから四書五経なんかお勉強しているのである。10代にして、自由民権運動なんかにも目覚めちゃっているのである。

色々の目覚めが早かった?所為ではあるまいけれど、20歳そこそこで「国を亡ぼすような伊藤博文はだめだ!」と暗殺しようと出かけて、話をしたらそこで仲良くなっちゃうとかね。もう20歳そこそこでエピソードが満載すぎて、とても追いつけません。

その後「玄洋社」っていう有名な政治団体に属しつつ、おひざ元の博多の発展はもとより、韓国の併合やら台湾の銀行、満鉄、日本興業銀行設立やら何やら。なぜかこの人が一枚かんでいるのである。政治家といっても、要職に就いている大臣や、ましてや議員さまでもないというのに、アジアの国々をも巻き込んでのこのスケールの大きい活躍っぷり。

実際のところ、強い裏方希望だったらしいし、世間さまからは何やってる人なのかよくわからなかったんだろう。日本だけじゃなくて世界を股にかけての駆け引き上手。押し出しもきっと強くていらしたのだろう。そしてその並外れた行動力。魔人とか法螺吹きとかいった、おもしろい?あだ名がいっぱいおありになったようである。確かに人間離れしている。夢野久作の文体のあのあやかしさ成分は、きっとこの茂丸氏から受け継いだ血に含まれているものに違いない。

ご興味ある方はぜひ、こちらご覧ください。日本史の年表そのままみたいなご活躍のオンパレード。日本にもこんな方がいらしたのだなあ、、とちょっと心が慰められる。

ちなみに余談だけど、インドの独立運動家ボースが、当時のイギリス植民地政府(その頃はまだ、インドはイギリスの植民地だった)に追われて日本に逃れて来た際、多くの人が手助けをしたが、この茂丸氏も逃走を助けたことがあるらしい。このボースさん。新宿の中村屋にかくまわれたり、逃亡の手助けが縁でそこのお嬢さんと結婚なさったおかげで、私たちは今、中村屋のカレーをありがたく頂くことが出来ているわけである。インドカレーの影に歴史あり。今度中村屋のカレーを頂く時には、この歴史を思いながら食したいと思います。

更にまたまた余談だけど、このボースが日本に亡命した時にはなんとあの、タゴール(インドの詩人)の親族と偽って入国してこられた、というので、またまた私は胸アツなのである。何故ならばこの映画、かなりサイコーだったので、私は今タゴールの詩集なんかも読んじゃっているのである(この映画のことは、コーフンが落ち着いたらまた書きたいと思う)。

tagore-songs.com

youtu.be

ね。もう、何だろう、こうやって話がとっ散らかるくらい、様々な要素がありすぎてそれが色々なところに伝播してる、こういう感じがタマラナイのですよ、、(夢野久作っぽく)。

そもそも茂丸氏は「アジア主義」を掲げていて、それは、イギリスにめちゃめちゃにやられていた中国の状況を見てショックを受けたことに端を発する。アジアはこんな風に列強の植民地なんかになってはいけないのだ、アジアは共に連帯して発展するのだ!という強い信念をそこで持ったらしい。

その信念、思想ではとどまらず、大胆に行動して歴史を動かしていったっていうのが本当にすごい。どこかの本に書いてあったように記憶しているが、それが九州という土地で為されたっていうこと。東京とか大阪じゃなくて、福岡という地を中心にアジア、そして世界を見渡すその視野の広さに、あの博多湾の上をさ~っと吹き抜ける風やその先にある国々の存在を感じるというかなんというか。ともかく「大アジア」的?大局の気風を体現されていたお方らしいのである。

このお父さんの話をいろいろ知るにつれ、夢野久作の世界には、どうして日本くさい感じがないのかってことがちょっとわかったように思う。私が夢野久作を好きな理由のひとつに、日本のことが書かれているのに、それもかなりの土着的なものが描かれている小説もあるのに、なぜか外国の香りがするってことってのがある。

死後の恋: 夢野久作傑作選 (新潮文庫)

この小説はそれが顕著なのだけれど、そして描かれている世界は残酷でしかないのだけれど、身体の臓腑の中の血まみれの宝石の硬さ、輝き。そしてそこに詠嘆される恋と、真と幻想が交じり合うこのお話。好き、、としか言いようがない。

ところで夢野久作はほんの幼いころから能の先生に弟子入りして、能への造詣が深い。そんなことを私は後になって知った。知ってから、嗚呼そうか、、と思うことがある。まずひとつは彼の独特の文体だ。もし夢野久作の本を読まれたことがない方が、ちらっと彼の文章を眺めたら、うへってなっちゃうかもしれない。ともかく独特だから眺めるだけでも「一見」とっつきにくく見えると思う。しかし、ちょっと声を出して読んでみて下さいましな。あら不思議。びっくりするくらい、身体に馴染む文体、声から身体に入ってくる文章。あの身体性のたかい文章は、一部、きっと能の世界からやってきたものに違いないと、勝手に私は思っている。

もうひとつは、この「死後の恋」がまさにそうなんだけれど、能のシテ方が死者のことばを語っているかの展開で小説が成り立っている点。なんかこれって、能の一部の演目のように、シテ方の語りー死者のことばが幻想の背景に溶けて、混然一体、あれ?私、いまどこで何を見て聞いていましたか。。。ってなるみたいな、そんな風情満載なのだ。

って語るほど、私は能のことはよく知らないのだけれど、高校生の時から読み続けて不思議!って思ってたことが、ある時この「能」というキーワードで解き明かされたように思って、うれしくてコーフンしたのでした、ということをお伝えしたかった。

。。。と、話が右往左往してしまっているのに、まだ半分も語れていない!申し訳ありません。

ってことで、杉山一族への愛語りは続く。

 

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