Warumiの柱

「こころミュージアム」のキュレーター。Warumiの「こころの魔法」研究報告です☆

本日の気分は「ドグラ・マグラ」であります。

f:id:Warumi:20200629005936j:plain

今日はショックでした。起きる直前、「今日の夢、なにこれ!ちょっとおもしろすぎ!」ってついね、笑っちゃったみたいなんですよ。そのはずみで、見たはずの夢をキレイに忘れ去りました。。。ほんと、ちょっと前まで笑えるほど覚えていたのに!

以前皆さまには、枕元にメモー!なんて申し上げておりました張本人がね、またなんたる不覚。 。残念過ぎて、ちょっと気と力が抜けたいちにちを過ごしておりましたが、皆さまはいかがお過ごしでしたでしょうか?

夢についてつらつらとまた、ぼんやりした空を見上げながら思いを巡らしておりましたら、夢野久作が心に浮かび上がって参りました。ということで本日は夢野久作DAYでございます。

しかし夢野久作!ああ、名前を見るだけで心が躍ります。恋みたい。北杜夫と同じく、私の精神の一部分を担ってくれている作家であることは間違いない。今でもきっと根強いファン、同好の士がいらっしゃると信じております。

好きな作品はもう、それはそれは沢山あるのですけれど、今日はやはり「ドグラ・マグラ」にちょっと触れたい気分です。「ドグラ・マグラ」。まずタイトルが尋常じゃない。何それ?何の本なの??と言いたくなりますが、「これを読んで精神に異常を来すかもよ」という出版社の宣伝込みでしたから、否が応でもますます期待が高まるというものです。

ドグラ・マグラ(上) (角川文庫)

ドグラ・マグラ(上) (角川文庫)

そうそう、これです。これ。高校生の頃でしたかね~角川文庫の棚にこの「ドグラ・マグラ」と「少女地獄」が並んでありましてね。表紙が若干こんな絵だし、精神は異常を来すかもしれないし!っていうんで、女子高生だった私は本屋さんでもう大コーフンしながら本を手に、レジに向かったことを今でもよく覚えています。

天下の奇書、と言われていますから、この本や数々のエピソードについて色々書かれている方も多いと思うのですけれど、ほんとに変わった本です。構想時から100年弱の時間が流れていますが、実に奇妙で様々な文化や思想、宗教、それらのバックボーンを孕みつつ、実に奇妙なストーリーが展開されていく。確かに時系列やストーリーを整理しようとすると、ちょっと気が狂いそうになるかも。しかし、この奇妙な小説が今の世の中にある様相をちょっと先取りしているような気も致します。そして高校生の私は小説を読んでいるつもりが、こんなに「論文」を読まされるとはビックリしたのでありました。

後で知ってなるほど!と納得したんですけどね、この夢野久作氏。もともと漢籍に通じているばかりか、能の素養もお持ちだったんですね。道理でね。この長い文章を自然に息継ぎしながら読み進めることが出来る。まさに血肉が通ったことばで、小説が書かれているんですよね。だから文章が身体からすっと入ってくる感覚があるんです。確かに難解ではあるかもしれませんけれど、ぜひ、この夢野久作の身体性のたかい文体にまず、触れてみて頂きたいなあ~。ハルキ先生の文体に中毒!って方もいらっしゃるかもしれませんが、からだからすっと入ってくる、身体感覚と共にある文章、作家と言えば、私的には夢野久作のひとり勝ちです。単純に読んでいてキモチいい。私の文体やことばのチョイスにも、ちょいちょい氏の影響がまだ残っているのにも、その特異さと私のミーハーぶりを改めて認識させられます。まさに天才。

あらすじはちょっと置いておくとして(といっても、筋はあって無きが如く、なので各々楽しんでくださいませ~)私が最初に度肝を抜かれたのが、本の中で、記者が正木先生の論文を記事にするという体裁で『脳髄は物を考える処に非ず』とこう、言いきっちゃってるところでした。脳が人間の肉体、臓器等などの統括器官であるに決まってるだろ!っていうのに「『物を考える脳髄』はにんげんの最大の敵である」とまで、また言い切ってる。

じゃ、一体どこが物を考えているかっていうと、それは「細胞」だって言うんですよ。もうひとつ『胎児の夢』っていう論文がこの中に出てくるのですが、その中では「その細胞一粒一粒の記憶力の凄まじさ。相互間の共鳴力、判断力、推理力、向上心、良心、もしくは霊的芸術の批判力等の深刻さはどうであろうか・・・」というくだりがある。まさに細胞が脳に取って代わってかのような、この言い切り。

小説「ドグラ・マグラ」の中の正木先生は、脳髄ってのは細胞の記憶を投影する器官であると言っている。だから(ものすごくはしょりますが)この完全犯罪を描くものがたりの、真の犯人とは「細胞の遺伝」から成るものなの!?と、こうなるわけです。

斬新すぎますよね~。でも、この考え方、荒唐無稽なまったくのデタラメかっていうと、時代が夢野久作に追いついてきているのか?実は、こんな研究成果があるんですよね。

www.crest-ihec.jp

「エピゲノム」っていう、遺伝子を介さない遺伝の仕組みが人間には備わっているのですが、もちろん「ドグラ・マグラ」の中の論文とは異なりますし(こちらはサイエンスです!)でも、とは言え、ちょっとこの「ドグラ・マグラ」に迫る世界観が昨今のサイエンスの中に存在しているんですよね~。私はこの「ドグラ・マグラ」を読んでから何十年もたって、自分がこのエピゲノム、という存在を知った時にちょっと震えました。私的にはわ!!!夢野久作が蘇った!ってまた、コーフンが!(ええ、わたくし、基本コーフンするのが趣味なんです)。

それと、またこれについては別に長々と語りたいのですが、この夢野久作の家系、というのがこの「遺伝」という要素を抜きにしては語れないものがあるのです。久作のお父様(もしかしてそれ以前も?)から綿々と受け継がれる、世の中の観方、というか捉え方、というものが、ちょっと日本というよりは大陸的なものを内包しているんですよね。

だから、この「ドグラ・マグラ」の中で描かれているこの「細胞」なんですけどね。私にはこれが現代の個人というメタファであるようにも思えます。この細胞=個人が統合される人間という肉体宇宙の中で、ひとりひとりの細胞が「・・・記憶力の凄まじさ。相互間の共鳴力、判断力、推理力、向上心、良心、もしくは霊的芸術の批判力等の深刻さ」を孕みながら全体の一部として生きている。なんかちょっと壮大な気分になりませんかね?

最後に!もうひとつ大好きな「少女地獄」の中で今でもなお、私の心の中に生き続けているフレーズがあるのでご紹介したいと思います。この小説は、天才嘘つき女子の姫野ユリ子の事件を描いた小説なのですが、姫野さん。誰しもの中に厳然と存在するこの「承認欲求」という欲が今、どんどん肥大している世の中にあってこの言葉はとても深く響きます。こちらは「ドグラ・マグラ」よりだいぶ短いので、手始めにぜひ☆

『ですから彼女は実に何でも無いことに苦しんで、何でも無いことに死んで行ったのです。
彼女を生かしたのも空気です。彼女を殺したのも空気です。
ただそれだけです。』

少女地獄 (角川文庫)

少女地獄 (角川文庫)

やっぱり今こそもっと夢野久作は読まれてほしい。ご興味の向きはぜひ☆お手にお取りください~

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ご相談、はじめました。

あなたのぴったり、しっくりを見つけにいきませんか?

warumi.hatenadiary.com

お問い合わせはこちらのフォームからお願いします。

お問い合わせフォーム - Warumiの柱

あなたとお話しする日が楽しみです☆

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆